作業療法士として働いていると、「今の職場以外にはどんな働き方があるんだろう」と考えることがあると思います。
特に病院などひとつの分野で長く働いていると、ほかの領域で作業療法士がどのように働いているのか、意外とイメージしにくいものです。
しかし、作業療法士の勤務先は病院だけではありません。訪問、介護、小児、精神科、就労支援など、さまざまな分野で作業療法士が働いています。
この記事では、作業療法士の代表的な転職先と、それぞれの特徴やどんな人に向いているのかを紹介します。
「今の職場から環境を変えたいけれど、どんな選択肢があるのかわからない」という方は、転職先を考える参考にしてみてください。
作業療法士の転職先は病院だけではない
作業療法士というと、病院で働くイメージを持つ人も多いかもしれません。
しかし、作業療法士が活躍できる場所は幅広くあります。
代表的な転職先としては、次のような分野があります。
- 病院
- 訪問看護ステーション・訪問リハビリ
- 介護施設・通所サービス
- 精神科領域
- 小児・発達領域
- 就労支援
- 学校・行政など
勤務する分野によって、対象となる人や仕事内容、求められる役割は大きく変わります。
そのため、「作業療法士としてどこで働くか」を考えるときは、給与や休日だけでなく、自分がどんな人と関わりたいのか、どんな支援をしたいのかも考えてみることが大切です。
ここからは、それぞれの転職先について紹介していきます。
① 病院
作業療法士の代表的な勤務先のひとつが病院です。
ただし、一口に病院といっても、急性期・回復期・慢性期などによって患者様の状態やリハビリの目的、関わる期間は大きく異なります。
急性期・回復期・慢性期などで仕事内容が変わる
急性期では、発症や手術後の早い段階からリハビリを行い、早期離床や身体機能の低下予防、退院後の生活を見据えた評価などを行います。
回復期では、急性期を脱した患者様に対して、身体機能だけでなく、食事・更衣・トイレ・入浴などの日常生活動作の改善や、退院後の生活に向けた支援を行います。
慢性期では、機能の改善だけでなく、現在の能力を維持しながら生活を続けていくための支援も重要になります。
私は回復期リハビリテーション病棟で約10年間勤務してきました。
回復期では、1人の患者様と比較的長い期間関わることができます。入院時から退院まで継続して関わるため、身体機能や日常生活動作が変化していく過程を間近で見ることができます。
脳血管疾患や整形外科疾患など、さまざまな疾患を経験できることも回復期の特徴です。
また、回復期は身体機能や日常生活動作の変化が比較的大きい時期でもあります。入院時にはできなかったことが、退院に近づくにつれてできるようになるなど、リハビリの成果を実感しやすく、達成感につながる場面も多いと感じています。
医師や看護師、理学療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカーなど、院内の多職種と関わる機会も多くあります。家族指導や家屋調査、福祉用具・住宅改修の検討など、退院後の生活に向けた支援も行います。
一方で、院外のスタッフやサービス事業所と直接関わる機会は、私の場合は主に退院支援の場面に限られていました。
また、回復期では退院までの期限を意識しながらリハビリを進める必要があります。
1日のリハビリスケジュールが詰まっていることも多く、単位に追われる感覚を持つこともあります。記録や情報収集、他職種との相談などに自由に使える時間が少ないと感じることもありました。
病院勤務が向いている人
病院勤務は、多職種と連携しながらリハビリにしっかり取り組みたい人に向いています。
なかでも回復期では、患者様と継続して関わりながら、身体機能や日常生活動作の変化を追いやすいため、リハビリによる変化を実感したい人にはやりがいを感じやすい環境です。
患者様と継続して関わりながら、身体機能や日常生活動作の変化を追いやすいため、リハビリによる変化を実感したい人にはやりがいを感じやすい環境です。
また、さまざまな疾患を経験したい人や、医師・看護師・PT・STなど多職種と相談しながら支援を進めたい人にも向いています。
一方で、入院期間やリハビリ単位を意識しながら働く必要があるため、忙しさを感じる場面もあるでしょう。
② 訪問分野
訪問看護ステーション・訪問リハビリで働く
訪問分野の大きな特徴のひとつは、実際の生活環境を見ながら支援できることです。
病院では、退院後の生活を想定してリハビリを行いますが、実際の自宅環境とは異なる条件で練習することも少なくありません。
訪問では、本人が普段生活している自宅で、動線や家具の配置、福祉用具、家族との関わりなど、環境面も含めて直接アプローチできます。
そのため、作業療法士として行った工夫を実際の生活に反映しやすいことは、大きな特徴のひとつです。
また、「家の中で移動しにくい」「着替えがうまくできない」「家事を再開したい」といった、本人が実生活で困っていることに対して、より具体的に解決策を考えられることも訪問分野の魅力です。
回復期病院で長く働いてきた私にとっても、退院後の生活を想定して支援することと、実際の生活の場で支援することには大きな違いがあると考えています。
訪問分野が向いている人
訪問分野は、実際の生活場面に近いところで支援したい人に向いています。
身体機能だけでなく、家の中の動線や家具の配置、福祉用具、家族との関わりなど、環境面まで含めて考える必要があります。
そのため、「この動作をできるようにする」だけでなく、「どうすれば実際の生活の中でできるようになるか」を考えることが好きな人には、やりがいを感じやすい分野でしょう。
また、訪問では1対1で関わる場面も多く、その場で自分なりに考えて判断する力も求められます。自分で考えながら支援を組み立てることが苦にならない人にも向いています。
③ 介護施設・通所サービス
老健・デイケア・デイサービスなどがある
作業療法士の転職先には、介護老人保健施設やデイケア、デイサービスなどの介護分野もあります。
病院と比べると、機能の改善だけを目指すというより、現在の能力を活かしながら生活を続けることや、その人らしい生活を支える視点がより重要になります。
老健では在宅復帰を目指した支援、デイケアでは通所しながらリハビリを受ける支援、デイサービスでは日常生活や活動参加を支える関わりが中心になります。
ただし、実際の仕事内容やリハビリの位置づけは施設によってかなり異なります。
転職を考える際は、求人票だけでなく、1日の業務内容やリハビリ職の配置、利用者との関わり方まで確認しておくことが大切です。
介護分野が向いている人
介護分野は、身体機能の改善だけでなく、生活そのものを支えることに関心がある人に向いています。
「できないことをできるようにする」だけでなく、「今できることをどう活かすか」「どうすればその人らしく生活を続けられるか」を考えることが好きな人は、やりがいを感じやすい分野だと思います。
④ 精神科領域
精神科病院や精神科デイケアなどで働く
精神科領域も、作業療法士が活躍している分野のひとつです。
精神科病院では、患者様の症状や治療段階に応じて作業療法が行われます。身体機能の改善だけでなく、生活リズムを整えることや、対人関係、社会参加なども支援の対象になります。
また、精神科デイケアでは、地域で生活しながら通所し、生活リズムを整えたり、他者との関わりを持ったり、就労や社会参加を目指したりする支援も行われます。
精神科領域が向いている人
精神科領域は、身体機能だけでなく、その人の気持ちや生活リズム、対人関係、社会での役割まで含めて支援したい人に向いています。
目に見える変化だけでなく、小さな変化やその人のペースを大切にしながら、丁寧に関係を築いていける人はやりがいを感じやすい分野です。
⑤ 小児・発達領域
児童発達支援・放課後等デイサービスなどで働く
小児・発達領域も、作業療法士が活躍している分野のひとつです。
勤務先としては、児童発達支援や放課後等デイサービス、医療機関、療育施設などがあります。
支援内容は、着替えや食事などの身辺動作だけでなく、遊び、手先の使い方、感覚への対応、集団活動への参加など幅広く、その子どもの発達段階や生活上の困りごとに合わせて関わっていきます。
また、子ども本人への支援だけでなく、保護者への助言や、保育士・教師など周囲の支援者と連携する機会があることも特徴です。
小児分野が向いている人
小児・発達領域は、子どもの成長を長い目で見ながら支援したい人に向いています。
できないことだけを見るのではなく、その子の得意なことや興味を活かしながら、遊びや活動を通して関わることが好きな人は、やりがいを感じやすい分野です。
また、本人だけでなく、家族や学校・保育園など周囲の環境も含めて考えることが必要になるため、環境調整や他職種との連携に関心がある人にも向いています。
⑥ 就労支援・学校・行政など
作業療法士の勤務先は、病院や介護施設だけではありません。
就労支援施設や学校、行政機関などで働く作業療法士もいます。
就労支援では、働くために必要な生活リズムや作業能力、対人関係などを評価しながら、その人に合った働き方を一緒に考えていきます。
学校などの教育分野では、子どもが授業や学校生活に参加しやすくなるように、姿勢や道具の使い方、環境調整などの視点から支援することがあります。
また、行政や地域の分野では、介護予防や地域づくり、障害福祉などに関わる働き方もあります。
これらの分野は、病院などと比べると求人数が多いとは限りませんが、作業療法士の知識や「生活を見る視点」を活かせる選択肢のひとつです。
病院や施設以外の働き方にも興味がある人は、こうした分野まで視野を広げて求人を探してみるのもよいでしょう。
作業療法士が転職先を選ぶときの5つのポイント
① 休日・勤務時間
転職先を選ぶときは、仕事内容だけでなく、休日数や勤務時間も重要なポイントです。
私自身、転職を考えるうえで特に意識したのが休日数でした。
作業療法士として長く働いていくことを考えると、仕事内容にやりがいがあっても、休みが少なかったり残業が多かったりすると、生活とのバランスを取りにくくなります。
年間休日数だけでなく、有給休暇の取りやすさ、土日祝日の勤務、残業時間なども確認しておくとよいでしょう。
また、同じ分野でも事業所によって休日数や勤務時間は大きく異なります。
転職先を選ぶ際は、「どんな仕事をするか」だけでなく、「どんな生活を送りたいか」という視点でも比較することが大切です。
② 給料・年収
転職するなら、給料や年収も当然気になるポイントです。
私自身、転職活動では現在と同程度、できればそれ以上の年収をひとつの条件として求人を探しました。
ただ、最終的には年収だけでなく、休日数などを含めた働き方全体のバランスを重視しました。
求人を比較するときは、基本給や月給だけでなく、賞与や各種手当を含めた想定年収まで確認しておくことが大切です。
給与が高くても休日が少なかったり、残業が多かったりすれば、自分にとって良い転職とは限りません。
「いくら以上は欲しいのか」「休日や働きやすさを優先するなら、どこまで年収が下がっても許容できるのか」など、自分なりの基準を決めておくと転職先を比較しやすくなります。
③ どんな対象者と関わりたいか
転職先を選ぶときは、自分がどんな対象者と関わりたいかを考えることも大切です。
作業療法士の勤務先によって、主に関わる対象者は大きく異なります。
脳血管疾患や整形外科疾患などの身体障害、高齢者、精神疾患のある方、小児、在宅で生活している方、就労を目指している方など、分野によって求められる支援も変わります。
「どんな疾患を経験したいか」だけでなく、「どの年代の人と関わりたいか」「病院の中で支援したいのか、実際の生活の場で支援したいのか」といった視点で考えると、自分に合う分野が見えやすくなります。
今の職場に大きな不満がなくても、「もっと生活に近い支援がしたい」「小児分野に関わってみたい」など、関わりたい対象が変わったことをきっかけに転職を考える人もいるでしょう。
④ 身につけたい経験やスキル
転職先を選ぶときは、今後どんな経験やスキルを身につけたいかも考えておきたいポイントです。
同じ作業療法士でも、勤務する分野によって経験できることは大きく異なります。
病院であれば、さまざまな疾患や身体機能、ADLへのアプローチを経験しやすく、訪問分野では、実際の生活環境を踏まえた支援や、福祉用具・住宅環境の調整などを経験する機会が増えます。
また、小児や精神科、就労支援などに進めば、それぞれの領域に特化した知識や関わり方を身につけることができます。
転職先を比較するときは、給与や休日だけでなく、「ここで数年働いたとき、自分にどんな経験が残るか」という視点で考えてみるのも大切です。
⑤ 将来どんな働き方をしたいか
転職先を選ぶときは、今の条件だけでなく、数年後にどんな働き方をしていたいかも考えておくとよいでしょう。
たとえば、臨床経験をさらに積みたいのか、専門分野を深めたいのか、管理職を目指したいのか、家庭との両立を重視したいのかによって、選ぶ職場は変わってきます。
今は魅力的に見える求人でも、自分が目指したい働き方と大きくズレていると、数年後にまた転職を考えることになるかもしれません。
「5年後にどんな仕事をしていたいか」「どんな生活を送りたいか」を一度考えてみると、目先の給与や休日だけでは見えにくい、自分に合った転職先を選びやすくなります。
転職先に迷ったら求人を比較してみる
自分に合いそうな分野が見えてきたら、実際の求人をいくつか比較してみるのがおすすめです。
同じ病院や訪問、介護分野でも、給与や休日数、勤務時間、仕事内容、リハビリ職の人数などは職場によって大きく異なります。
「訪問は給与が高そう」「病院は休みが少なそう」といったイメージだけで判断せず、実際の求人を見ることで、それぞれの働き方をより具体的にイメージできます。
転職サイトを利用すると、複数の求人を比較したり、自分だけでは見つけにくい求人を探したりできるメリットがあります。
一方で、担当者とのやり取りが必要になることや、転職サイトによって扱っている求人が異なるなど、利用する前に知っておきたい点もあります。
転職サイトを使うか迷っている方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
まとめ|作業療法士には病院以外にも多くの転職先がある
作業療法士の転職先には、病院だけでなく、訪問、介護、精神科、小児、就労支援などさまざまな選択肢があります。
それぞれ仕事内容や対象者、働き方が異なるため、どの分野が一番良いというものではありません。
大切なのは、自分が仕事をするうえで何を重視したいのかを考えることです。
休日や年収を重視するのか、関わりたい対象者で選ぶのか、身につけたい経験や将来の働き方を優先するのかによって、合う職場は変わってきます。
今の職場が合わないと感じていても、それだけで「作業療法士という仕事が合わない」と決めつける必要はありません。
働く場所や分野を変えることで、自分に合った働き方が見つかる可能性もあります。
気になる分野が見つかったら、実際の求人を見ながら給与や休日、仕事内容などを比較してみてください。


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